現在「フィギュア女子シングルの強豪国といえば?」と質問すると殆どの人がロシアと答えるんじゃないでしょうか?でも、考えてみれば同時期にトップレベルの選手を複数抱えるようになったのは最近の話です。その前はどちらかと言うと日本がそんな感じだったんですがいつの間に?ロシアに何が起こったんでしょうか?
目次
フィギュアスケート ロシア女子シングル冬の時代から復活まで
2014年にソトニコワ選手がソチオリンピックで金メダルをとる少し前からロシアの女子フィギュア界では実力のある若手選手がたくさん出てきました。しかしそれ以前はあまりぱっとしない時代が続きました。
2000年代前半から中盤にかけてはイリーナ・スルツカヤという世界屈指のスケーターが活躍していました。彼女はグランプリ・ファイナル4回、世界選手権2回優勝し、オリンピックでは2002年ソルトレイクシティで銀、2006年トリノで銅メダルを獲得しています。
しかしその前にオリンピックでメダルを取得したのは1984年サラエボオリンピックのキラ・イワノワ(旧ソ連)になります。
ところがソチオリンピックあたりを境に今やどの大会でもロシア選手が表彰台に登っているくらいすごい躍進ぶりです。トゥクタミシェワ選手、ラジオノワ選手、パゴリラヤ選手、リプニツカヤ選手は有名ですが、2015-16シーズンの新世界女王有力株のメドベージェワ(メドベデワ)選手や、ジュニアグランプリシリーズで2連勝したソツコワ選手、昨シーズンのジュニアでメドベージェワ選手についで2位になったサハノヴィッチ選手など、一世代下の層もかなり厚いです。
なんで数年の間にこれほどまでに有力な若い選手が現れたのでしょうか?
フィギュアロシア女子が強くなったきっかけはソチオリンピック
実はソチオリンピックの招致が決まったときに、プーチン大統領は自国の選手が活躍しないと示しが付かない、と冬季五輪競技の強化を図りました。ソチオリンピックにピークを持ってこれるように有望な若手を国家規模で支援したのです。
そして、強化したのは選手だけじゃありませんでした。ロシア女子の衰退にはコーチの高齢化なども関係していたため、ベテランコーチの後継者となる若手コーチの育成にも力を入れました。優秀なコーチがたくさん育つということは、より多くのポテンシャルの高い選手を、才能を殺さず開花されられる可能性も高まります。そうやって、どんどん若手のすそのを広げて行ったんですね。
ロシアの育成施設とスケート環境がスゴイ!
では、国策と言っても、実際選手たちがどんな支援を受けているのか気になりますよね!
次の動画では、ロシア国立のスケート育成施設を紹介しています。
まず「国立」でこんなに立派な施設があるのがスゴイですね。
それに3つもリンクがあれば練習に集中できますね。そして、まわりの優秀な選手と切磋琢磨したら自然と国のレベル自体が底上げされますしいいことづくしですね。
陸上での踊りのレッスンにも力を入れていてビックリです。どうりでロシア選手はジュニアでも大人っぽい演技ができるわけだ。ラジオノワ選手がエキシビでHIPHOPをやった時は完全にダンサーの動きでしたし、ソトニコワ選手もダンス上手ですね。
何より、スケートが遊びの延長の身近な存在であることは大きいですよね。気軽にやることができれば、小さい子も才能に気づきやすいし原石が見つけやすいんでしょうね。
ちなみに、代表レベルを争えるような有能な選手たちはモスクワのサンボ70、サンクトペテルブルクのディナモといった有名スポーツクラブに所属し、練習漬けの生活を送ります。とはいえ、小中学生くらいの年齢の子は勉強はどうするの?と思いますが、校外生制度を利用して通信教育や家庭教師をつけて最低限必要な学習をしている子たちも多いようです。
日本とロシアのスケート環境の違い
日本では市民リンクを営業後に貸しきって練習していたり、ちっちゃい子からシニアクラスの子まで一緒のリンクで基礎練したり。←これはこれでメリットもあるそうですけど、年齢やレベル毎に分けて十分な練習環境を作れないゆえの対策とも言えますし。
それに踊りの練習は選手の自主的な部分になるんでしょうかね。あの羽生選手もダンスは習ったことないと言っていた気がします。彼は世界一の表現力の持ち主なのでどうってことないかもしれないけど、いち視聴者の勝手な意見として本格的なダンスをやればさらに化けるだろうなと思ったりもします。
浅田選手もバレエに力を入れだしてからの動きが変わりましたし。HIPHOPダンスが好きな村上佳菜子選手も曲に合わせた雰囲気を醸し出すのが上手です。
あとは日本はスケートが気軽にできる環境じゃないですよね。遊び感覚でちょろっと滑りに行けるのってほんと限られた地域だけの話ですし、そうなると必然的に間口は狭くなりますよね。これまでたくさんの有能な子どもたちがリンクに立つ経験もなく大人になってきたかもしれない。
しかも選手でも強化選手入りとかしないとなかなかバックアップを受けられないですしね。
やっぱり国が支えてくれるか、個人の能力や財力任せになるかによって練習内容・環境に差が出てしまうのは仕方ないかもしれませんね。日本にはトップクラスにも若手にも有望な選手がたくさんいるので嬉しいですけど、未来のそんな才能のためにも国がもっと支援して欲しいものです。
ロシア女子フィギュア王国は平昌オリンピックまで続く?
ロシアの国を上げてのバックアップが続く限りは今のように有力な選手の卵が国中から出てくるんじゃないでしょうか?もしかしたら政治や経済事情で国の方針が変わることもあるかもしれませんけど、世界に誇れるものをわざわざ衰退させる必要はありませんからね。
フィギュア王国について少し懸念すること
国の強化対策が開始し成果を出している今の世代は10代後半から下の世代です。特にシニアで活躍しだす10代後半になると成長による体型変化でスランプに陥りやすい年齢ですよね。
トゥクタミシェワ選手はこれによりソチ五輪出場を逃しましたが、持ち前のジャンプの才能でスランプを乗り越えました。しかし、リプニツカヤ選手やラジオノワ選手、ポゴリラヤ選手は今まさに成長期と戦っていますね。その分上にも書いたメドベージェワ選手を筆頭に若手選手がシニアに参戦し成果を上げれば、あっという間にポディションを奪われることになります。
そして次はメドベージェワ選手世代が成長期になるころには若い選手に座をあけ渡す。そんな連鎖が生まれそうです。もちろんみんな能力が高いので復活してさらに活躍する選手もいるでしょうけど、若手に勢いがあるロシアでは選手のピークが15歳とかになりそうですね。
それはそれでいいことでもあります。常にフレッシュでジャンプを軽々跳べる選手が揃えば優勝を狙える確率も上がりますし。国としてはオイシイですけど、選手個人としては年齢にたいするプレッシャーが強まりそうですね。
そして成長期を超えて表現力を鍛えた成熟した演技を観たい視聴者としてもちょっと物足りないかなと思います。若い選手は20歳前後の選手よりも個性が薄い気がしますし。
しかし、それが現実となるかはこれから分かることですね。フィギュア王国は今の黄金世代が20歳を超える頃どうなっているんでしょうか?
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