「光化学オキシダント注意報」という聞き慣れない注意報が全国各地で発令されるようになりました。これは大陸からの有害物質による大気汚染の注意報なのですが、”光化学オキシダント”とはどんな物質なのでしょうか?PM2.5とは別物なのでしょうか?そして、私たちの生活にどのような影響をもたらすのでしょうか?
目次
光化学オキシダントとはどんな物質?大気汚染の原因はやはり中国?
光化学オキシダントとは、工場などから排出される煙や、自動車などから排出されるガスに含まれる窒素酸化物などが太陽の紫外線を受けて光化学反応を起こすことで作り出される有害物質です(オキシダントoxidantとは「酸化体」という意味)。
日本(とくに西日本)で空気中の光化学オキシダント濃度が増える原因は、中国大陸の大気汚染が原因であると考えられています。
空気中の光化学オキシダント濃度が高まると、空気は白っぽくモヤがかかったようになります。
これが光化学スモッグです。
どんな時に発生しやすい?
光化学オキシダントは晴れて日差しが強く、気温が高く、風の弱い日に発生しやすいそうです。
時期的には温かい3月~8月にかけて濃度が上がります。
空気が濁っていて(モヤがかかっていて)遠くが見えづらいという日は
とくに光化学オキシダント濃度が高いと考えられます。
光化学オキシダントとPM2.5は別物?
PM2.5とは、待機中の微粒物質の中でも粒径が2.5μmの小さな物質のことを言います。
PM2.5には工場の煙や乗り物の排ガスなどに含まれる微細な燃えカスや金属、硫黄酸化物、窒素酸化物
採石場の粉塵、火山灰、森林などから排出される揮発性有機化合物などが含まれます。
つまりPM2.5とは、ある特定の物質の名称ではなく、
あらゆる微細な2.5μm以下の物質の総称ということです。
(地域・国によって含まれる成分や割合は変わります。)
つまり、光化学オキシダントとPM2.5は別物ではなく、
光化学オキシダントはPM2.5の一部なんです。
この粒径2.5μmという大きさが一体どれほど小さいのかと言うと、
髪の毛の30分の1程度で、花粉よりも小さいんだとか。
あまりに小さいため、吸い込むと肺の奥まで入り込んでしまい、
気管支喘息にかかったり、症状を悪化させる恐れがあると考えられています。
(日本の研究ではどの微粒子がどんな健康影響を及ぼすかという研究はこれからなされるそうです。)
光化学オキシダントを過剰に吸い込むとどうなるの?
光化学オキシダントを吸い込むとすべての人に健康被害が発生するわけではありません。
しかし、ひどい場合は以下のような症状が現れることがあります。
- 目の痛みやチカチカした感覚
- 涙が出る
- 喉の痛み
- 咳(喘息のような症状も)
- 頭痛・吐き気
喘息のある方や、アレルギー体質の方
そして小児や高齢者に症状が現れやすい傾向があるそうです。
光化学オキシダント注意報や警報が発令される基準とは?
光化学オキシダントの環境基準は1時間値が0.06ppm以下とされています。
以下が注意報・警報・重大警報の基準です。
(注意報)基準測定点において、濃度が 0.12 ppm 以上となり、気象条件から見て、その状態が継続 すると認められるとき。
(警報)基準測定点において、濃度が 0.24 ppm 以上となり、気象条件から見て、その状態が継続 すると認められるとき。
(重大警報)基準測定点において、濃度が 0.40 ppm 以上であり、気象条件から見て、その状態が継続 すると認められるとき。
引用:福岡県保健環境研究所HPより
光化学オキシダントにマスクは意味ない?!防止策は?
光化学オキシダントは非常に小さな物質です。
大気に紛れているため、一般的なマスクでは防ぎにくいと言われています。
(マスクなしよりは良いと思いますが)
光化学オキシダントを防ぐためには高性能のマスクを装着するという手もありますが、
もっとも有効なことは屋内にとどまることです。
また、洗濯物を外で干さない。
窓をできるだけ開けない。
外出後はうがいをする。
といったことも心がけましょう。
注意報発令で日常生活に支障を来す場合も
よほど酷い光化学スモッグでも発生していない限り、
光化学オキシダントは目に見えないので、実感が湧きにくいですよね。
実際に私の住んでいる地域で注意報が発令されたときも、
夏日で晴れて熱かったのですが、
空気についてはちょっと乾燥しているかな?ぐらいで
普段と大差ないように感じていました。(私が鈍感なだけかも…)
しかし、光化学オキシダント注意報によって、
学校行事が中止または縮小されるなどの影響は出ているようです。
今後、もしさらに大気汚染が進めば、子どもたちの行事だけにとどまらず
野外イベントなどにも影響が出てくるのでしょうか?
「晴れていても運動会は屋内で」という時代にならないことを願います。
実感がわかないからこそ未来のために警戒を!
今は実感がわかないからこそ我々は無防備になりがちですが、
この瞬間にも巨大な隣国から来る光化学オキシダントを吸い込み続けているわけです。
このことが数年後、数十年後に私たちの体にどのような影響を及ぼすのか?
かつての日本の高度経済成長時代と比較してどれほど大きな被害になるのか?
今の段階では誰にもわかりません。
だからこそ「念には念を」で、
注意報が発令されたらなるべく外気を吸わないよう心がけたいですね。