2016年、フィギュアスケート界の話題の一つが驚異の4回転ジャンパーであるネイサン・チェン(ネーサン・チェン)選手がシニアデビュー、そしてグランプリファイナル出場を果たしたことです。注目度、技術ともに急上昇中のネイサン・チェン選手ですが、2018年平昌オリンピックでは羽生選手と金メダルを争う選手となるのでしょうか?ネイサン・チェン選手のプロフィールや長所・短所についてご紹介します。
目次
ネイサン(ネーサン)・チェンプロフィール
名前:ネイサン・チェン(Nathan Chen)
誕生日:1999年5月5日(17歳※2016年)
出身地:アメリカ合衆国ソルトレイクシティ
代表国:アメリカ合衆国
身長:165cm
コーチ:ラファエル・アルトゥニアン、ナディア・カナエワ、マリナ・ズエワ
元コーチ:エフゲーニャ・チェルニシェワ、カール・コバール
振付師:ナディア・カナエワ、マリナ・ズエワ
元振付師:ニコライ・モロゾフ、ラファエル・アルトゥニアン、ステファニー・グロスカップ
所属クラブ:ソルトレイクシティFSC
引用:wikipedia
ネイサン・チェン選手のご両親は北京からの移民で5人兄弟の末っ子です。
3歳からスケートを始めました。当初は地元のコーチに教わっていたのですが、父親の失業などの影響でほとんど練習できない時期もあったようです。
しかし再び本腰を入れた時期に現コーチのアルトゥニアンに出会いました。彼はアメリカのトップスケーター、アダム・リッポン選手やアシュリー・ワグナー選手のコーチでもあります。
ネイサン選手はジャンプのトレーニングのために時々、アルトゥニアンコーチのいるカリフォルニアを訪れていましたが、その後は母と二人でカリフォルニアに転居してスケート中心の生活を送るようになったそうです。
参考記事:https://www.nytimes.com/2014/01/14/sports/a-junior-champion-at-14-and-a-rising-talent-for-2018.html?_r=0
また彼は5歳からバレエを習い表現力を磨いてきました。そしてスケーティングスキル向上の為、今夏よりマリナ・ズエワのもとパトリック・チャン選手らと共に練習しています。(コーチはアルトゥニアンのままです。)
主な戦績
世界ジュニア選手権2014ソフィア・銅メダル
ジュニアグランプリファイナル2013福岡・銅メダル、2015バルセロナ・金メダル
グランプリシリーズ2016NHK杯・銀メダル
ネイサン・チェンのスゴイ所
ネイサン・チェン選手といえば4回転ジャンプですよね。
彼はトウループ、サルコウ、フリップ、ルッツという4種類の4回転ジャンプを跳ぶことができます。一つのプログラムに4種5本の4回転ジャンプを組み込むんですから驚きです。
しかも今年のNHK杯で4Lz-3Tのジャンプで転倒し単独になってしまいましたが、リカバリーで跳んだジャンプが4F-3Tという世界初のコンビネーションジャンプだったんです。
宇野選手の4回転フリップ成功も大ニュースでしたから、ネイサン・チェンが3回転のコンビネーションつけたことがいかにスゴイことかわかりますよね。
ちなみに超人ジャンパーのボーヤン・ジン(金博洋)選手ですら現時点では4T、4S、4Lzの3種しか跳べません。
ネイサン・チェンの本当の魅力は4回転じゃない
実は彼のストロングポイントはジャンプだけではないんです。
まだ荒削りですがスケーティングはキレイですし、柔軟性も高いし、なんと言っても手足の動き(所作)や姿勢が美しい。つまりネイサン・チェン選手はジャンプだけで語られるような選手ではなく、羽生選手のようにトータルバランスの取れた選手ということです。
羽生結弦に憧れるネイサン・チェン
ネイサン・チェン選手は以前から羽生結弦選手に憧れており、NHK杯で初めて羽生選手と同じ大会に出て表彰台で隣に並ぶことができ、とても感動したようです。
彼は羽生選手についてこう語っています。
羽生選手はフリーで4回転を4本入れているのに、さらに演技を楽しんでいるのが伝わってきました。ジャンプだけに集中していないのは素晴らしいことです。
あと羽生選手は、集中力とか、精神的なエネルギーが素晴らしいですね。試合に向かっていく闘志を、一緒に練習していてすごく感じました。僕もああいう、自分をプッシュする力がもっと必要だと感じました。
引用:http://web.canon.jp/event/skating/interview/2016_2017/chen.html
羽生選手から得たものは大きかったようですね。
NHK杯のチェン選手のフリー演技はフィンランディア杯と比べてものすごく迫力が増しているように感じましたが、もしかして羽生選手の練習に触発されたんでしょうか??
ネイサン・チェンは平昌でメダルを取れる?心配は怪我か
ネイサン・チェン選手の今季後半の成長にも期待したいところですが、気になるのは何と言っても2018年の平昌オリンピックですよね。
チェン選手は確実にメダル候補の一人でしょう。個人的には羽生選手の別格時代は続く気がするのでハビエル・フェルナンデス選手や宇野選手、パトリック・チャン選手に割って入れるかどうかというところだと思います。
シニアデビューのネイサン・チェン選手はこの1年でどれだけ伸びるかで来年の運命が大きく変わるでしょう。
では彼の課題は何なんでしょうか?本人の発言などをもとに力を入れようとしている部分をリストアップしてみました。
①スケーティングスキル
ネイサン・チェン選手にとってこれが一番の課題でしょう(もともとキレイですけど)。
前述のようにアイスダンス出身のマリナ・ズエワに振付と指導を依頼しているのがその現れです。パトリック・チャン選手の究極のスケーティングを間近に練習できるのも心強いですね。
チェン選手は今季のプログラムで複雑なステップシークエンスに挑戦しています。まだレベル4を取れていませんが今シーズン中に改善させてくると思われます。
②ジャンプの安定感
ネイサン・チェン選手のジャンプはまだまだ安定感を欠いているように感じます。4種類5本の4回転を組み込むプログラムというのは高いリスクを伴います。
しかしこれには意味がありました。
今季はシニアデビューですしまだ17歳なので、順位にこだわる年齢ではないです。とにかく今季の目標はフリーで4回転4種類降りること、そしてできれば4種類5本すべてを降りることです。この年齢を考えた時に、そういう戦略になりました。
今シーズンはハイリスクでも経験を積むのが彼のチームの方針のようですね。
一方でNHK杯では4回転の数を減らして安定感を優先した結果2位になりました。安定感を追求したとしても3種の4回転を組み込む攻めの構成ができるのは彼の強みですね。
きっとオリンピックでは彼の一番滑りやすい構成で勝負してくるでしょう。
③表現力
もともとダンスが得意な選手ですから演技構成点も伸ばしていきたいはずです。表現力に定評のあった宇野選手がシニア1年目から2年目にかけてよりいっそう表現力を伸ばしていったように、彼もシニアトップレベルの戦いの中で刺激を受けて来シーズンにかけて表現力を磨いていくのではないでしょうか?
振付師が身近にいる環境で練習できますし期待十分です。
④怪我の懸念
ネイサン・チェン選手はこれまで何回も怪我に悩まされてきました。
- 2013JGPクロアチア大会―怪我で棄権
- 2015全米選手権―シニアクラスに出場するも骨端軟骨に問題(いわゆる成長痛)を抱えたため不調
- 2016全米選手権―エキシビションで左股関節を痛めたため手術、シーズン残りの試合を全て欠場
手術を経験して以降、ケガしない体づくりに力を入れており、現在も術後の後遺症なども無いようです。ですが、今後数年はまだ成長期真っ只中ですし、体のコンディションも変わりやすいと思います。
個人的には怪我が一番心配です。
⑤プレッシャー
これは憶測です。シーズン後半どうなるか分かりませんが、伸び悩んでいたアメリカ男子フィギュア界でようやく逸材が登場してきて、当然メディアもエースとして注目するでしょう。それに挑戦者として楽しめばよかった今シーズンとは違い2シーズン目ということで本人も結果を求めるようになるはずです。
そういう周囲や自分自身のプレッシャーとの戦いも待っているかも知れません。
と、ネイサン・チェン選手の心配な点を欠いてきましたが、いい点もあります。
宇野選手にも同じことが言えますが、出場できれば平昌が初めてのオリンピックですし、シニアデビューシーズン同様挑戦者の気持ちでオリンピックを楽しめることができればそれがいい結果に繋がるということもありえますよね。
ともかく、新勢力の現れはすばらしいことですし、ネイサン・チェン選手は平昌とは言わず、それ以降も年々進化していずれ羽生選手のように無双時代を築き上げるポテンシャルのある選手だと思っています。
まずは今シーズン、怪我なく無事に終えられますように。
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