同じチームに所属する三原舞依選手と坂本花織選手。昨シーズンはともにすばらしい結果を残し、二人とも平昌オリンピック代表の有力候補と期待されています。そんな二人がオリンピックシーズンに向けて新プログラムの制作に取り組んでいるようです。勝負の一年、二人の鍵を握るのはブノワ・リショーという振付師かもしれません。
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2016-17シーズンに大躍進した三原舞依&坂本花織
2016-17シーズンに大躍進したのが三原舞依選手と坂本花織選手です。
三原選手は病から復帰後初のシーズン(しかもシニアデビュー)で四大陸選手権初制覇、世界選手権ではまさかのショートプログラム15位からの大逆転で総合5位入賞という素晴らしい結果を残しました。いまやISU(国際スケート連盟)の公式サイトで特集を組まれるほど世界的に注目されています。
坂本選手は全日本ジュニアで優勝、世界ジュニア選手権で3位に輝いただけでなく、出場したジュニアの大会全てで表彰台に登るというすばらしい成績を残しています。
二人に共通するのは大きなジャンプとスピードあるスケート(技術力の高さ)、そしてどんな大会でも大きく崩れない安定感ではないでしょうか。
テクニックそしてメンタルともに安定している両選手は、来年の平昌オリンピック出場の有力候補と期待されていますね。
二人が掲げる共通の課題とは?
二人が共に掲げている今後の課題は”表現力””プレゼンテーション力”です。
日本の、特に10代前半~半ばの選手は本田真凜選手など一部例外があるものの、表現する力に関しては欧米の選手に比べるとやや劣るのかもしれません。
そもそも日本人は感情やパッションを前面に押し出す国民ではないですからね。
三原選手や坂本選手も大きな国際試合で安定して結果を出せるようになったからこそ、さらに上へ行くために必要な要素がはっきりと見えたのではないでしょうか。
坂本選手
「ジャンプの勢いはそのままに、表現やスケーティングを強化して、戦える選手になりたい」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170409-00000045-dal-spo
三原選手
「プレゼンテーションを磨きたいので、バレエのコースに参加したり、挑戦していきます。目標は自分のプレゼンテーションを、他のトップスケーターたちと競えるレベルまで向上させることなので、日々の練習から姿勢や表現力に注意を払っていきたいです」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170509-00010005-theanswer-spo
振付師ブノワ・リショーのプログラムでオリンピックを目指す
三原選手が言うように、バレエやダンスなどで体の動かし方を習得することでプレゼンテーションの評価は上がっていくはずです。
そしてさらに、評価を左右する大きな要素の一つがプログラムの選曲と振付けではないでしょうか。
フィギュアスケート界には、有名な振付師が複数います。例えば浅田真央さんの振付けでおなじみのローリー・ニコルや、羽生結弦選手のプログラムを複数手がけているデビッド・ウィルソンやジェフリー・バトル、シェイリーン・ボーンなどです。人気の振付師では年間に50本以上ものプログラムを作るそうです。
世界中に振付師が数多くいるなか一部の振付師にとくにオファーが集中するということは、やはり振付けが成績を左右する重要な要素であると考えられているからでしょう。
そんな大事な振付けを、しかもオリンピック出場の鍵を握る振付けを、三原選手と坂本選手はフランスの振付師ブノワ・リショーに依頼したようです(曲名やSP・FPどちらかなどはまだ不明)。
ブノワ・リショーというお名前。日本ではまだそこまで知られていないと思います。
では、ブノワ・リショーとはどんな振付師なのでしょうか?
振付師ブノワ・リショーとは?経歴や過去作品など
ブノワ・リショーはフランス・リヨン出身の振付師です。
1988年1月16日生まれの29歳!(2017年5月現在)
かなり若手ですよね。
彼は2009年までフランスのジュニアのアイスダンサー代表として活躍していました。
シニアには進まず、引退後に振付師に転身したのですが、この若さにも関わらず新進気鋭の若手振付師としてすでにヨーロッパでは注目度を上げてきているようです。
現役時代の成績
ブノワ・リショーは選手時代に3人の選手とペアを組んでいました。
スカーレット・ルゼ(Scarlett Rouzet)、エロディ・ブルイラー(Élodie Brouiller)、テラ・フィンドレイ(Terra Findlay)です。※読み方違ったらスミマセン
主な成績
ブルイラー&リショー組
- 2006年ジュニアグランプリ メキシコ大会2位、フランス大会3位
- 2006年世界ジュニア選手権7位
- 2007年フランス選手権ジュニア2位
フィンドレイ・リショー組
- 2008年ジュニアグランプリ ベラルーシ大会3位
- 2008年フランス選手権ジュニア2位
ジュニア時代はフランス国内でもトップクラスの成績をおさめています。
演技動画がコチラです↓
2009年ヨーロッパ選手権 テラ・フィンドレイ&ブノワ・リショー”Sing Sing Sing”
過去の振付作品
デニス・ヴァシリエフス(ラトビア) 2015-16:SP踊るリッツのよる/FSトロンのためのアダージョ
この2つのプログラムでヴァシリエフス選手はリレハンメルユースオリンピック銀メダルを手にしました。
そしてこちらは見覚えのある方多いんじゃないでしょうか
エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア) 2015-16、2016-17SPカルミナ・ブラーナ
技と技の間の振付も工夫されていて、ただ滑っている時間がないですね。相変わらず妖艶さはダダ漏れてますが、トゥクタミシェワ選手のスピードと曲調がマッチして力強さが伝わります。
アレクサンドル・ペトロフ(ロシア) 2015-16FSオブリビオン
またアイスダンスのアッラ・ロボダ&パヴェル・ドロースト組は2017年世界ジュニア選手権でリショーのプログラムで銀メダルを獲得しています。
どの選手の振付も、たとえば手を波のように動かしたりと指先まで表現力を求められる動作が多いように感じました。
そしてなによりステップがそれぞれの曲調よく合っていますし、細やかで華があります。
そしてブノワ・リショーの振付師としての真骨頂がこれだと思っています↓
ジェレミー・アボット Land of all
スローな曲調に反して動きは細やかで目を離す隙きがないほど作り込まれているのが分かります。
スケートというより洗練されたダンスを見ているようです。なんならセリフが聞こえてきそうなほど感情が現れているプログラムだと感じました。
これを演技したアボット選手はリショーに対してこのように語っています。
「この男…僕は彼を殴ってやりたいのか、キスしたいのか、よく分からない。
彼が作ったプログラムは僕がこれまでに滑ったどのプログラムよりも難しい。おかげで、僕の動き方、僕の滑り方、
僕が演技中にどう見えるか・・・全てが大嫌いになったよ。
でも僕が自分の中にあるこの壁を壊すことができれば、これは驚くような素晴らしい作品になり得るし、
きっとそうなるはずだ”」twitterより引用
アボット選手にはリショーの振付が衝撃的だったようです。インスタグラムでも「僕の人生におけるどの振付よりも精神的、肉体的、感情的なチャレンジだった。 」とも語っています。
ベテランのアボット選手にこう言わしめるほど、ブノワ・リショーの振付には独特の世界観と魅力があるのでしょう。
アボット選手の場合はショー用プログラムなので試合のものとは簡単に比較できません。ですが、若干20代の若手振付師に大きな可能性を感じざるをえません。
新たな扉は開くのか?
三原選手と坂本選手に話を戻します。
オリンピックがある大事なシーズンに初めての(しかも若手の)振付師と組むのはかなりの冒険だと思います。
ですが二人を指導する中野園子コーチやチームは両選手に”表現力の向上”だけでなく新たな扉を開いてほしいが故にブノワ・リショーに依頼したのかもしれませんね。
まだ見てもないプログラムなのでコメントしようがないですが、技術力の高い二人だからこそ難しいプログラムも滑りこなせるでしょうし、切磋琢磨して表現力に磨きをかけることで爆発的な成長とげるかもしれません。
三原選手も坂本選手もオリンピックへ初チャレンジですし、振付師としては経験の浅いリショーも今がチャレンジの時だと思います。伸びしろたっぷりな3人が作るプログラム気になりますね。
ちなみにリショーは三原選手と坂本選手との3ショット写真にこんなハッシュタグを付けていました。
「#roadtopyeongchang #somethingnew」
楽しみでしかたありません。